22ステラの考察

みなさんこんにちは。リールメンテナンスドットコムの内田です。
Facebookでは先行して取り上げましたが、22ステラのお問い合わせがあまりにも多く、その多さが10ソルティガリコールの比ではない量になってきましたので、改めてご紹介、弊社の意見を掲載させていただきます。

代表個人的にはシマノ大好き派です。
ソルティガのリコールの時もそうでしたが、特定メーカーや特定の機種の良し悪しを個人の判断基準で評価したものではなく、お客様のご意見、実際の不具合の状態検証、色々な方面への意見聴取、事実確認をもとにした記事内容となっております。何卒ご了承ください。

弊社で把握している不具合内容は大きく分けて3点です。

1.ライントラブル系の不具合

2.テンション高負荷時のオシレートノイズ

3.シャフトノイズ

 

先に結論申し上げます。
初期不良や個体差というより、今回は完全な設計不良があるのではと「想像」しております。リールをバラして機構や状態の検証を行うのは得意ですが、ものづくりに関しての知識はメーカー設計者さんほどの知識は持ち合わせていないので、あくまで「想像」です。
弊社では調整不能です。特に1と3はそれぞれ5台ほど検証し、2022年9月前半時点では「部品交換や調整で修復できない」という結論になり、お客さまへのお問合せには、作業お断りと状態のご意見をお話しさせていただいてます。

2.に関しては机上検証が難しいことと、同じご意見を伺う限りで分解するまでもなく動作不良だと思われる事案のため調整等の受注はお断りしています。

まとめますと、22ステラで巷で騒がれているトラブル、不具合系は、2022年9月前半のこの時点では少なくとも弊社では修復調整できないということになります。

 

「現時点」と何度もお話ししているのにはワケがあります。追ってご説明しますが、重要なことなので頭の片隅に留め置きください。

1.ライントラブル系の不具合

むちゃくちゃ遅いオシレートスピード+密巻き、ベールの形状、アームカムの構造やクリアランス、原因と考えられる部分はたくさんありそうですが、5台検証した共通見解は、アームカムの取り付けビス及びビスの入るローター側のねじ穴、クリアランスの問題がいちばんの原因のようです。使用過程でアームカムの取り付け部分の隙間が異常に空いてくるようです。ビスの締め込み、シム調整等で若干改善できるように思えたのですが、動作テスト100回程度で再度隙間が開きました。
過去にアームカムやベールの隙間ができるのは、08ステラSWや09ツインパワーの4000番、5000番で確認していますが、事後生産ラインでは改良されたようです。ネジとカラーの改良部品が出ました。いわゆる部品対策というやつですね。
今回の22ステラも「おそらく」対策部品出ると思います。2022年9月初旬の現時点ではまだ修正は難しい状況です。

2.テンション高負荷時のオシレートノイズ
今回厄介なのが、1オンスを超えるような超高負荷時には出ないが、シーバスでシンペンなどを引く時、潮の流れが噛んだタイミングだけでオシレートノイズが出るという意見あるいは似通ったご意見を本日まで30件ほどいただきました。
オシレートノイズとは、一定条件でスプールが上下するタイミングのいずれかで、「カタカタ」「コトコト」という正常ではない音と振動があるものを指します。特にウォームシャフトを縦方向に施したシマノのスピニングリールの大半は、正常であってもある程度のオシレートノイズが出てしまうのは、構造上の特徴なので仕方がないことなのですが、機械ものだからしょうがないでは済まされないレベルの音が出る場合は、不具合だと認識できます。年式や機種で違いますが、過去のシマノのスピニングリールではクロスギヤピン(オシレートギヤピン)にベアリングを搭載したものが多く、このベアリングが回転不良(錆びや負荷つぶれ)を起こすとオシレートノイズが出やすい傾向にありました。ベアリングを交換すれば素直に修復できるものはこれが原因です。2013年以降の大型ステラ、小型ステラ、ヴァンキ、ツインパなどの一部の機種ではウォームシャフトギヤの前後の位置調整、クリアランス調整でノイズが出たり、収めたりが出来るものが多くありました。ほとんどがピンにはベアリング非採用です。いずれも使用過程で出てきたものは部品交換やベアリング交換、位置調整で問題なく解決してきました。また、いずれも付加の大小にあまり大差なく、常時ノイズが出ますので、「不部品や調整に具合がある」と判断できていました。今回の事例は一定負荷のみで出るのが特徴です。
ウォームシャフト付近に今までなかったバネが採用されていたり、中間ギヤ等の形状がかなり設計変更されています。
先ほどのスローオシレートに関係してくると思いますが、同じご意見の件数があまりにも多いため、現時点で全て弊社での調整はお申し込みをお断りしております。

3.シャフトノイズ
19/20ステラSWの発売当初には同じ事例とお問合せ多かったです。
「油の切れた自転車のような音がする」「シャーではなくキコキコと表現できるようなノイズが出る」
といったようなものです。ローターナットとピニオンギヤの下部に設置されている樹脂製のカラーとシャフトの擦れ音のようなもののようです。19/20ステラSWは現在の販売個体や手配入手できる部品では改良されています。
このノイズに関しても、「おそらく」対策部品出ると思います。2022年9月初旬の現時点ではまだ修正は難しい状況です。

 

2010年製ソルティガではリコールが出ました。

発端は弊社へご依頼いただくリピーターのお客さまが20台持っているうち、最初の方に購入した10台がどれも同じように「回転が重い」ということから弊社へ作業のご相談がありました。
マグオイルが明らかに硬いものとサラサラしているものがあり、固くなっているものが通常使用に耐えれないほど回転が重いことを突き止めました。

ヘビーユーザであるこのお客さまをはじめ、同じ意見が多数メーカーに寄せられ、結果、特定ロットのソルティガやキャタリナがリコール対象となってしまいました。
メーカー発表の内容としては、「接着剤のはみだしによるもの」という説明で、納得できていないユーザーが多かったようですが、弊社の把握した内容では、ローターの下に配置されているマグシールドユニットの接着部分から、マグオイルへ成分がはみ出し、マグオイルが硬化状態になってしまったというものでした。
対策されたマグシールドユニットに交換すれば修復できます。
ダイワですごいなと思うのは、最近のマグユニットの精巧さです。確実にアップデートされてます。だから「マグ抜きは意味ないですよ」と弊社ブログで意見しているのはこのことなんです。

シマノは弊社の知る限りでは、電動リールのリコール、竿のリコール、08ステラSW等のアームローラーの無償交換以外ではこれといってリコールがないように思えます。(自転車は結構あるようです)
良い悪いではなくあくまで会社の方針でしょうから、弊社のような個人企業がどうのこうの意見をするものではないですが、過去の事例としてはリコールがほぼないのが現実であります。

次々に新製品を出して競争しなくてはならない現状の中、設計から実証テストしてフィードバック、改良後発売、という一連の流れの中で不具合検証とフィードバックがうまくいっていないうちに次の製品を出さないといけない現実、メーカーとしては大変なところだとは思います。車のように人命に関わる事故につながることは少ない(全くではないでしょうけど)所詮遊び道具であるとは思いますが、決して安い買い物ではありません。また一応、ステラなんですよね。フラッグシップモデルです。もう少しメーカーさんも頑張ってほしいかなと、ユーザであり外部業者の立場としては思ってしまいます。。。。
ステラ発売の後に出るツインパやヴァンキが発売初期からバリバリにきっちり出来ているのは、やはり色々改善されてから出るからなんでしょうか?よくわかりませんが、そのような気がしてなりません。。。。。

ただ、シマノのすごいところもあります。
ユーザーから出た意見は把握、検証し、最終的には以後何回後かのロットで、対策部品や調整部品が反映され、機種生産終了までにはバッチリのものが出来上がっています。新機種販売後、数年後の弊社での修理やオーバーホール作業で、「ああそういえば発売当初はなんか不具合あったよね」という機種も、部品を交換すればバシッと決まる仕上がりになるのです。


今回は、「お店で在庫を並べて巻き比べてみてください」があまり通用しなくなってきたようなので、あえて記事にさせていただきました。新機種選定の際のご参考になれば幸いです。


リールメンテナンスドットコム 
変態リール親父 内田

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